カテゴリー「国連金融サミット・デスコト国連総会議長」の8件の記事

2010年7月31日 (土)

スティグリッツ国連報告(通読版)デスコト議長序文 真実のための戦いへの招待状

《 国連総会議長諮問に対する国際通貨金融システム改革
     についての専門家委員会報告
      … スティグリッツ国連報告最終版2009/09/21 》

 いつ読んでも味わいのある、またファイトを燃やさせるデスコト前国連総会議長の発言です。これまでご紹介していたのが慨訳だったことに気づき補完訂正しました。キナ臭い情報が増えました。それからスティグリッツ専門家委員会が非公式な存在として扱われていたことも書かれていました。これは推測ですが、そうでないとスティグリッツ専門家委員会設立を認めない動きがあったことを予感させ、まさに「真実のための戦い」への案内状を受け取った感がします。

 最初の全訳は2010年7月におこないましたが、2010年12月出版時に改訂したので、下記の記事をクリック下さい。

「スティグリッツ国連報告序文(通読版2010/12改訳)」
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2009年10月14日 (水)

真実のための戦いへの招待状…スティグリッツ国連報告序文概訳(デスコト国連総会議長)

 これはスティグリッツ国連報告(最終版2009/09/21)に寄せられたデスコト第63期国連総会議長による序文を概訳したものです。デスコト氏とスティグリッツ教授は二人三脚でこのプロジェクトを進めてきました。米国を筆頭にこのプロジェクトに対する反発は予想されたものとはいえ、大きなものがありました。それを克服できたのは二人に共通する社会変革、貧困・失業撲滅等への情熱と、政治力、理論力によるのでしょう。デスコト氏は、多国間主義が盛んに叫ばれる中で、真の多国間主義としての国連主義を実現しようとしています。特に国連総会を国連の民主主義的合法性の基礎として重視しています。その意味で6月の国連会議の成功は国連史でも画期的なものとして評価されることになるでしょう。

 しかし戦いは尚、緒に就いたばかりです。国連改革は国連重視と日米安保同盟重視という難しい戦略の日本の民主党外交の行方にも大きな影響を与えます。オバマ大統領の多国間主義の内容も問われるところです。国際金融政策において米国資本中心主義、ウオール街中心主義から自立できない限り、今回の金融危機の真の意味での克服はできません。ノーベル平和賞を受賞したオバマ大統領と日本の民主党政権が国連中心の民主的な多国間主義外交の発展に寄与できるかどうか、国民として注視していく必要があるでしょう。序文の最後に出てくる「招待状」ですが、是非受けとめていこうではありませんか。核兵器廃絶への道もそこにあるのだと思われます。

 ここでは慨訳を掲載してありますが、そのご全訳したものを下記ブログ記事に掲載しました。翻訳分はそちらをお読みください。→「スティグリッツ国連報告デスコト議長序文(完訳

〈 序文目次 〉
1.国連総会は、最高レベルの意志決定の場としての能力を証明した
2.我々の世界経済は多くの可能な経済の一つに過ぎない
3.世界経済のガバナンスを担う国連総会
4.真実のための戦いへの招待状

 尚、スティグリッツ国連報告は翻訳したものを章別に掲載してあります。
      序文(Foreword) 本ブログ
 第一章 はじめに(Introduction) 第1-57項
 第二章 マクロ経済問題と全体像(perspective) 第1-133項
 第三章 国際的規制の改革により世界経済の安定性を高める 第1-235項
 第四章 国際機関(International Institutions) 第1-117項
 第五章 国際金融の革新 第1-101項
         国際準備通貨制度 第1-58項
        その他 第59-101項
 第六章 結論(Concluding Comments) 第1-37項

森 史朗 2009/10/13
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《 国連総会議長諮問に対する国際通貨金融システム改革についての専門家委員会報告
・・・スティグリッツ国連報告最終版2009/09/21 》

〈 序文…概訳 〉(見出しは訳者による)

1.国連総会は、最高レベルの意志決定の場としての能力を証明した

 2009年6月26日、驚くべきことが起こった。「国際金融経済危機とその開発への影響」についての幅広く特別に意義深い声明を、192ヶ国で構成される国連がコンセンサス方式で採択したのである。この種の文書は課題設定に傾き勝ちであるが、その文書は、議論の部分はほとんど無く、行動決定の形を取っていた。しかし、その文書は大胆な政策変更と、制度改革を含んでいた。当然、その決議文書は妥協と計算された曖昧さとの結果であったにも拘わらず、我々の世界経済危機の原因と対処法についてのどんな政府間プロセス(たとえばG-20…訳者)が発行した声明と比べても最も包括的なものとなっている。その決議文書は国連の、討議の場所としてだけでなく、最高レベルの意志決定の場所としての潜在能力を強く証明するものでもあった。

 決議文書は、国際通貨金融システム改革についての専門家委員会から受けた大きな影響を反映している。それは私が2008年11月の終わり頃に、ジョセフ・スティグリッツ委員長の下に委嘱したものであった。

 月が潮に影響するように、委員会は加盟国の議論に大きな影響を与え、討議を表面的な関心から、その致命的な影響が現在の危機を表象するものとなった制度的問題に導いてくれた。彼らはこの最終報告結論に書いてあるように、加盟国を気づかせ大胆に考えるように支援してくれた。

   この危機は、経済に何かが起こった、何か、回避は勿論、予見
   さえできなかったことが起こったというような、単なる百年に一度
   の事故ではない。我々はその逆を考える、危機は人間がつくっ
   たものであると。これは民間セクターによる過ちと、誤って適用さ
   れ失敗した公的政策の結果なのだ。(第6章第1項) 

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2009年9月22日 (火)

国連改革から国連再建へ・・・デスコト国連総会議長の第63期国連総会閉会挨拶

 2008年9月、国際金融危機と共に国連総会議長に就任したミゲル・デスコト・ブロックマン氏ですが、国際通貨危機への対応を中心に「G-192」の名の下、国連総会の役割を高め、先進国主導の国際政治に対抗してきました。今年の8月、広島、長崎を原爆の日に訪れ、原爆投下への個人的な陳謝と、国連総会議長としての核廃絶への決意を述べました。そのデスコト国連総会議長が9月14日(2009年)退任しました。

 デスコト国連総会議長の退任に当たっての演説が国連のホームページに掲載されていましたので、紹介します。国際情勢に関わる部分は全訳しました。謝辞の部分は
省略してあります。

下記の5項目は国連の現状が赤裸々に書かれていて考えさせられました。
③世界金融・経済危機への取り組みとG-192の確立
⑧パレスチナ問題
⑨重要に感じられた概念、課題と、教訓
⑩国連改革ではなく国連再建・・・現在の国連の問題点
⑪新しい国連憲章の制定

デスコト63期国連総会議長の誠実で、且つ強力な指導力に改めて感動しました。⑨には2020年核廃絶についてもふれられています。⑧では怒り心頭に発することでしょう。国連の様々な問題意識をしることもできました。国際政治・経済、国連のこれからの役割に関心を持っている人には必読の文書。

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《 第63期国連総会閉会に当たって 》
 2009年9月14日 第63期国連総会議長ミゲル・デスコト・ブロックマン
 (小見出しは訳者が行いました)

①世界に残された時間は確実に無くなってきている

 親愛なる兄弟、姉妹の皆様、
 
 「テンプス・ヒュジット( tempus fugit )」ローマ人はこう言ったものですが、正しい指摘でした。「光陰矢の如し(Time flies)」、私たちに残された時間は無くなりつつあります。そして、時が過ぎゆくのに従って、これからやってくる世代にふさわしい未来を確かなものにするために残された機会も失われて行きます。

 私のような老人はこの現実をよりはっきりと感じています。片足を既に墓石に入れるようになると、私たちは物事の緊急性をよりはっきりと理解できるようです。私たちは最悪のシナリオを現実にしないために必要なステップを取って行くのに遅れたままでいることは許されません。しかしながら今回の場合は単なる老人の戯言で済まされることではありません。世界に残された時間が確実に無くなってきているのです。
 もし私たちが連帯できず、人間社会の後ろにあって牽引力となっている社会的意識、或いは環境への責任感といったものをつくり出すことができなかった場合は、話は簡単で、私たちは生き延びることができません。今日の人間の行動を性格付け、方向付けている利己主義、個人主義、貪欲、排他的国益は、人類という種の消滅に導くだけです。私たちは既にその道を下っています。そして、ある時点を越えると方向を変えることができないかも知れません。

 1年前、まさにこの演壇から、議長職の間にどのようなことを達成したいと考えているか展望を分け合いました。皆さんは信頼と好意を持って私をその職に選出して下さいました。今や残された課題を引き継ぐ時になりました。

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2009年8月20日 (木)

国連金融サミット2009/06の開催期間が延長されていた

 既に旧聞に属する話かも知れませんが、今年(2009年)の6月24日から26日までの予定で開催された国連金融サミット(「世界金融経済危機とその開発への影響についての国連会議」)は実際には29、30日の2日間延長され、30日に閉幕となっていました(27、28日は土日で休日)。延長の経緯は定かではありません。しかし、理由は発言希望国が予定より多かったからだと思われます。また、延長が決まったのも当初の閉会日26日の午後のことと推測されます。26日の午後1時までの予定でデスコト国連総会議長から、「国連会議で決議が採択されたのに当たって」という演説をしているのですが、「我々は、歴史的な会議の3日目の昼をついに迎えた」と閉幕を迎えた挨拶になっていました。

 普通ですと、延長決定の文書やそれに関わる発言が記録文書として公開されて然るべきなのですが、それが国連のHPに見当たりません。この延長の判断の根拠は、閉会式でのデスコト国連総会議長(今回の国連会議議長でもあります)挨拶が国連HPに掲載されており、その日付が2009/06/30となっていたことと、会議での各国代表の発言がビデオと文書で見られるようになっているのですが、それが24日からの5日間に分けられていたことから判断したものです。その他の多くの書類があるのですが会期は変更されていません。という私も過去に書いた文書の当該箇所を変更していませんので、対応しきれないという同じ理由かも知れません。

 そうこうしている内に、今日書類を見直していて、会期延長の証拠としては決定的なものを見つけました。それは表紙だけ「決議案」から「決議」に変わるだけのはずの、会議の決議書です。表紙に会議の名称と共に、会期も書いてあったのです。それは国連総会決議の形を取っています。短いものなので、以下、翻訳します。

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 「国連総会」 (印刷分類:General 2009/07/13)
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 国連総会採択決議(Main Committee に関係なし)

《 「世界経済金融危機とその開発への影響」についての会議での決議(63/303.)》

 国連総会は、
 ニューヨークで2009年6月24日から30日にわたって開催された「世界経済金融危機とその開発への影響」についての会議と、当該会議が、決議を採択したことに留意し、
 本(国連)決議に添付された「世界経済金融危機とその開発への影響」についての会議での決議を保証(裏書き)することを決定する。(「保証」という強い言葉より「同意」という言葉の方が妥当かも知れません。)

 第95回本会議、2009年7月9日
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 余分な日付が入ってきて混乱しそうですが、趣旨はご理解頂けると思います。いずれにせよ、途上国や新興国にとって今回の危機を克服することが以下に大変かを示し、先進国にとっても今回のデスコト国連総会議長+スティグリッツ教授の攻勢がいかに厳しいものかを示すものとなっています。会期の延長は、そうした状況を示していたのでは無いでしょうか。

 何はともあれ、このような情報を整理しておらず、ブログをお読み頂いた方に誤った情報をそのままにしていたことをお詫び致します。

 さて、デスコト国連総会議長は、9月の任期到来を前に、広島、長崎を訪れ、同じキリスト教会派の人が原爆投下に直接関与したことに許しを請うと同時に、核兵器廃絶のために必要となる取り組みを提案して行きました。それは、「全ての国に等しく適用される新しいルールを含め、公正さを高めること、そして全ての国の人々の正当な安全保障上の利益を高めるべく、透明かつ公平に機能するように様々な仕組みを改革すること」であるといいました。説得力のある問題提起だと思いました。

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2009年7月 7日 (火)

基軸通貨問題は延長戦に・・・国連金融サミット(2009/06/24-30)決議概訳

 (最初のコメント部分を加筆し、少し分かりやすくしました、主観的にですが。2009/07/10)

だいぶ遅れましたが、ようやく金融サミット(2009/06/24-30)決議の概要の翻訳を終了しました。

 (ホームページに同記事を掲載しました。印刷にはこちらを利用されると便利です。)

 明日7月8日からはイタリアのラクイラでG8を軸にしたサミットが開かれる段になって、6月28日に掲載した記事「IMF世銀では実を取るも、米ドル基軸通貨制は変えられず…デスコト国連総会議長」に誤りがあることに気付きました。「準備通貨制度問題については決議に全く触れていない」と書いていましたが、第36項にはっきりと火種が残されていました。

 「危機は、現在の国際準備通貨制度を変革しその不十分なところを克服すべきだといういくつかの国々の声を強めさせた。多くの国から『もっと実現可能性を検討したい』、『もっと効率的な準備通貨制度についてアドバイスすることができるか知りたい』という要請を受けた。勿論、SDRの機能を利用した場合のあらゆる可能性や、様々な地域的制度によって果たされる補完的役割についての質問も含まれていた。このような研究やその実行についてのパラメーターと、それらについての共通認識を追求することが大切なことも我々の認めるところである。新しいものと、従来のもの、地域的なものと準地域的なもの、経済と金融との協働イニシアチブが存在し、特に、流動性の不足や、加盟国間の短期経常収支(の調整?)という困難な問題を解決して行くのに有効かも知れないと、我々は認識している。」と、決議の国際準備通貨制度変革への意向は明らかです。今後の検討体制も整えています。

 まず、56(e)項で「『世界金融経済危機とその開発へのインパクト』についてのアド・ホック専門家パネル設立について検討し、国連総会に勧告する」ように経済社会理事会に要請しています。国連総会の現在の構成から見ればスティグリッツを再度委員長に呼び出すことも可能でしょう。

 54項では、「アド・ホックに、期限の定めのない(Open-ended)、国連総会のワーキング・グループを設立」することを提案しています。「その目的は、この決議に含まれている諸課題をフォローアップし、国連総会に報告することである。ただし報告期限は第64会期終了前と」なっています。

 これらの前提として第55項で、次期国連総会議長に、「『世界金融経済危機とその開発へのインパクト』を第64期国連総会でのGeneral Debate のメイン・テーマとすること」を求めているのです。

 このように国連での準備通貨制度問題への積極的取り組み姿勢が明らかになる中で気になるのが中国の動きです。中国は現在の米ドル単一通貨準備金制度見直しの姿勢を強めていますが、一方で、この問題を協議する場としては、国連よりもG20のような場の方がふさわしいとも発言しています。米ドルが内包してきた制度的過大評価が顕在化するか否かの重要問題だけに米国も防衛に必死なはずです。途上国側に足並みの違いが出るのは避けたいところです。
 
 さて、「世界経済理事会」の件も、名前は消えていますが、56(a)項に経済社会理事会の昇格検討の課題として引き継がれています。「この決議のフォローアップと実行を担当する、国連開発システムと専門エージェンシーを調整・対応する機能を強め、理事会の昇格を検討されたい。調整と対応は、問題の解決に当たって、密度の濃いものを生み出し、テーマに関連したコンセンサスの積み上げを支援するに当たって一貫性を与える役割を果たす。」と、経済社会理事会に要請しています。

 こうしてみると、デスコト氏が妥協したのは、ブレトン・ウッド機関を存続させることにしたこと位です。それも、準備通貨制度の担い手はまだ不明です。そして機能面での変革要求は山のように書き込まれています。フォローアップ体制もしっかり作って行きましたから、「実」は取ったといえます。

 G20との関係も、第16項にはっきりと書いてあります。「我々は2009年4月2日にロンドンで開催されたG-20を承知している。そして世界経済を再び活性化するために1.1兆ドルの追加プログラムのコミットメントを組成したことを評価するものである。しかしこのファンドの大きな部分は新興市場と発展途上国で使用され、最貧国に配分される資金は5百億ドルと限られている。我々はG20諸国にコミットメントの実行を求めるものである。と同時に、我々はG-20での決定を評価するものではあるが、我々は調整役も含めて、経済金融問題における国連と加盟国の役割を強めることを決意しているものでもある。」

 理論的に新自由主義を批判したところは、9項と41項くらい、それより「世界社会フォーラム」的考え方を述べたところが目立ちました。3項、6項、10項、21項、23項にそうした主張が見られました。

 デスコト国連総会議長とスティグリッツは、大変な仕事をしてきたといえるでしょう。

森 史朗 2009/07/07
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《 世界金融・経済危機とその開発へのインパクトについての国連会議2009/06/24-26決議(概要) 》

英文原本は2009/06/22付け「Draft Outcome Document」となっていますが会期最終日の26日にそのまま正式決議として採択されました。また、段落番号の後に付された〈小見出し〉及び文章への下線は、訳者が付したものです。)

01.〈今回の金融危機の特徴〉 世界は大恐慌以来の金融経済危機に直面している。進化しつつある危機は、世界の主要な金融センターから始まり、世界経済を通じて厳しい社会的、政治的、経済的インパクトをもたらしている。被害は全世界に及ぶが、特に発展途上国の被害が大きい。危機は積年のシステム的脆弱性とバランスの悪さだけでなく、国際金融システムと設計思想(architecture)の変革と強化の必要性をも際立たせた。

02.〈国際金融システムの変革と国連〉 国連憲章は、「経済的、社会的、文化的又は人道的性質を有する国際問題を解決することについて、…国際協力を達成すること」、「これらの共通の目的の達成に当って諸国の行動を調和するための中心となること」を定めている(第1条3-4項)。国連は、世界中から加盟国を得ていること、代表権の合法性が確保されていることから、国際金融システムの変革の役割を果たしてゆく上でふさわしい位置にある。これまで様々な取り組みがなされてきたが、国連の取り組みは政治的機動力となり得る点で、それらを支援することができる。この国連会議も危機からの回復を目指す集団的努力の一部をなすのである。

03.〈危機による「人間の安全保障」の後退〉 世界経済金融危機の発生に何の役割も果たしていない発展途上国がその被害を受けている。ミレニアム開発目標を含む経済社会プログラムによって前進を見てきた発展途上国であるが、それらの国、それも特に最貧国が、今回の危機によって損なわれ、後退させられている。貧困、飢餓、病気、失業、教育等の社会保障コスト(人間のためのコスト)は、「人間の安全保障」の後退をもたらしている。

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2009年6月25日 (木)

国連サミットニュース6/24

国連本部で6月24-26日にかけて「世界金融経済危機とその開発への影響についての国連会議」が開催されています。その様子を報道した記事を探したのですが見当たりません。そこで、国連のサイトにあるUN News Service を紹介します。
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《 世界経済危機と格闘すべく世界の首脳が国連に集まった 》

 2009年6月24日- 全ての国の利害を勘案しながら、経済のメルトダウンをどう解決して行くかを討議するために、世界中から高いレベルの代表団が今日ニューヨークに集まった。これを機会に、国連トップが世界の最も貧しい人々の負担を軽減するための行動を呼びかけた。

 「この決定的なタイミングに、我々は何百万の目を社会・環境・人道的悲劇に向け、世界的危機を回避するために共に努力を集中しなければならい」と、ミグェル・デスコト国連議長は国連会議の冒頭で発言した。

 デスコト国連総会議長は、「膨大な多数派の人々をその運命に任せる」ことのないよう、今日の混乱を解決することを求め、「我々全ての者に集団的に最も大きな影響を与える決定を行うに当たって」、150国近い参加国が3日間の会期の中で発言するよう訴えた。

 デスコト国連総会議長の発言は、今回の危機は、「誰か一人にとっての課題ではない、一国或いは一国家グループにとっての課題でもない、我々全ての者への挑戦なのである」と、潘基文国連総長に支持された。

 金融安定化の兆しと、世界のいくつかのポケットでの経済成長にも拘わらず、危機の実体的影響は何年にも及ぶ、と潘氏は語った。

 惨事の進行を止めるためには、多様な側面からのアプローチが求められる。それらが組み合わさり、加速を得て、教育、グリーン経済成長の推進、自給自足農家への支援、そしてエイズや肺炎などの病と闘うためのリソースを増やすことができる。と、潘氏。

 何世代も前の時代につくられた国際機関はより強められた説明責任と、民主的代表制、効率性を持つものに変革されなければならない、とした上で潘氏は金融機関の変革をめぐって加盟国が分断されていることを残念に思うと声を強めた。

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2009年6月21日 (日)

世界金融経済危機国連会議をめぐる先進国の不穏な動き

 6月24-26日にかけて開催される「世界金融経済危機とその開発問題への影響についての国連会議」(以下「国連サミット」)に付いての情報を探していたところ Global Policy Forum (以下GPF) と言う国連の政策監視団体を見つけました。そのブログに関連記事が載っていたので、5月14日付けと少し古いのですが紹介します。予想されていたことですが英米の抵抗は大きいようです。

 それから、スティグリッツ国連報告の中間草案が5月21日に出されていました。昨日見つけたのですが、5章113ページの大部なものです。第1章が"Introduction"(p.5-15)になっているので、その部分だけでも訳出してみるつもりです。これまでの草案と構成がだいぶ違い、文章も書き換えられていますので、新訳のつもりで取り組みたいと思います。尚、草案としてはこれが最後の版で、最終版は会議終了後に会議での討議結果を踏まえて発表されます。

 (尚、6月24-26日に開かれた国連金融サミットに提出された中間草案第一章(INTRODUCTION)を完訳したものを、「スティグリッツ国連報告中間草案2009/05/21(第1章完訳)」として掲載しています。そちらも合わせて参考にして下さい。

 また、国連金融サミットの決議内容については、「基軸通貨問題は延長戦に・・・国連金融サミット(2009/06/24-26)決議慨訳」を参考にして下さい。)


《 経済危機についての国連サミットをめぐる戦い 》

6月1-3日(この段階ではまだ6月24-26日への延期が発表されていなかったようです…訳者註)、国連は世界経済危機についてのサミット会議をニューヨークの国連本部で開催します。昨年12月のひどい状況の中で、最も豊かで最も力のある国々はそのイベント開催に確かに同意しました。しかし今、権力者達は考え直そうとしているようです。そして、力ずくで企画を頓挫させようとしています。会議を全く開けなくするか、開催されたとしても何の重要な決議もできなかったというようにしようというのです。できることなら危機前の経済秩序が最小の変化で回復され、全てが昔通りにウォール・ストリートとシティ・オブ・ロンドンに笑顔と共に戻ってくる。ワシントンとロンドンには、そんなことを心から望む人がいます。

 国連では、ニカラグアの活動家出身のミグゥエル・デスコト国連総会議長が会議開催に向け努力していました。その会議の目指すものは確かに毎日の仕事を昔通りにはできなくするものでした。デスコトは世界中から経済学者をパネルに招請しし、コロンビア大学のノーベル賞受賞者、ジョセフ・スティグリッツを委員長に据えました。そして彼らはゲームのルールを変える提案を携えて登場してきました。今のところ中国が世界準備通貨への新しいアプローチを支持しています。それはドルの役割を低下させるものです。参加諸国の大多数は根本的変革がすぐにでも必要だと考えているようです。しかし最も豊かな国々はそうは考えません。そこで、国連総会の交渉人達が強力な外交戦に取り組んできているのです。

 ある一角では会議(とたくさんの改革案)への反対派が活気づき緊張しています。何人かはゴードン・ブラウン英首相のように、改革派のような顔をしてパブ(英国風の大衆酒場)に現れます。しかし実際には国連のやり方には反対で、現状をしっかり維持するのに熱心なようです。ブラウン首相と何人かの人たちは、会議を気の抜けたビールのような議題で開催するようにしなければ自分達は出席するつもりはないと、私的に立場を表明しています。ワシントンも同じ考えのようです。これらの現状維持派勢は本当の改革派の人々に、「戦いから降りろ。そしてIMFやG-20、或いは秘密主義の金融安定化委員会に任せよう。」と訴え、力ずくでつぶしにかかっているのです。つまり、危機は引き続き世界経済を荒し続けるだろうし、収束の見通しは定かではないが、システムの変更という危険は最小限に抑えようと言うのです。

 システム改革の問題はある国にとって特に脅威なのです。英国は自国経済の大きなシェアを金融部門に依存しています。ロンドンは世界最大の金融センターですから。ほとんどの商品生産が消え去り、北海の石油産出量が急落している今、国の金庫を満たすことができるものとして何が残されているのでしょうか。観光では間に合いません。巨大な石油会社は自分達の資産は国外に置いておく方針を頑固に守っています。結果的に、英国経済は惨めな姿をさらしており、政府は国債を販売するのに苦労しているのです。ですからロンドンにいる首脳達は火のようになってアングローアメリカの規制緩和された金融システムを守ろうとしているのです。彼らは金融システムの息を吹き返らせ、引き延ばし、生き続けさせようとしているのです。たとえそれがぐらついていて、危機に陥りやすく、その危機がどれほど破壊的であってもです。

 保守的な人々が世界政治システムのスロットル(絞り弁/ブレーキ)を握るのは事態がより悪化する前に終わりにしたいものです。今は、国連で誰かが話していたように(デスコト国連総会議長のことを指していると思われる…訳者註)、人間が必要とするものを提供する経済について時間をかけて議論する時なのです。保守派の妨害を乗り越えて、会議が前進することを期待します。そして、それが本当に現在と違った世界経済へのドアを開くものであらんことを。

Helen Paine 2009/05/14 (翻訳 森 史朗 2009/06/20)
関連ブログ記事:「人間中心の経済」を・・・デスコト国連総会議長の6月首脳会議決議草案

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2009年5月18日 (月)

「人間中心の経済」を・・・デスコト国連総会議長の6月首脳会議決議草案

 今年(2009年)の6月1-3日(その後6月24-26日に変更されている)の3日間、国連の全加盟国192ヶ国の首脳が一堂に会します。ミグェル・デスコト国連総会議長の議事の下で、国連首脳会議が開催されるのです。議題は、「国際金融経済危機と開発への影響」です。スティグリッツを委員長とする「国際通貨金融システム改革専門家委員会」がそのために報告書を準備中だということ、5月8日に報告草案の4月5日付改訂版が発表されたことは先日ブログで紹介しました。(尚、6/1-3の首脳会議を総会としたのは誤りでしたので訂正します。訳者)

 さて、同日の5月8日に、デスコト議長から6/1-3首脳会議の決議書(Outcome)草案が発表されました。大半はスティグリッツ報告を再編集しているのですが、冒頭の数頁にはスティグリッツ報告以上に共感を呼ぶ訴えがありましたので、ここで紹介します。ミグェル・デスコト氏は米国生まれのカトリック神父で、ニカラグアのサンディニスタ解放戦線に参加し、その勝利後1979-1990の間、ニカラグアの外相を務めた人です。2008年9月からラテン・アメリカとカリブ海諸国の推薦で国連総会議長に就任。任期は1年。

 まず第一に確認したのは、デスコト議長の下に組織されている今回の国際金融システム改革への構えの大きさです。〈G-192会議プロセス〉に書いてあるように、2010年9月までの準備期間を置いています。そして自らの国連総会議長としての任期は2009年9月に終わるにも拘わらず、この会議については最後まで担当する決意を示しています。会議自体も今年の6月3日に閉会とせず開催中として議論と準備を進めることを提案しています。

 草案は会議の目的を、①危機の根本的原因を解明する、②その国際的影響を抑える、③国際金融・経済システムと体制を再構築し、より民主的で、平等で、バランスが取れていて、安定していて、貧困と不公平を克服し、地球の循環と共存できる持続可能な社会・経済モデルを作り上げる、としています。この会議は1944年に開催され第2次大戦後の金融・経済システム(ブレトン・ウッズ体制)を決定した国連首脳会議に次ぐものとして位置づけられているのです。

 米国からは今年末の景気の底入れを見込む発言が続き、株価の上昇も見られますが、スティグリッツを含めたデスコトチームは、「危機を克服するにあたって持続可能な均衡ある経済を実現することが重要である。世界が単に以前の状態に戻るだけでは充分でない。望ましくも可能でもない。」と、釘を刺し、景気が回復してきたとしても、今回の改革を中途半端に終わらせないとしているのです。スティグリッツも国連報告の第2版で「国際経済危機からは徐々に回復して来るだろうが、地球温暖化や貧困撲滅のためには追加対策が必要となる。過剰生産力と大量失業が同居する世界など受け入れ難い。」と記しています。

 草案は会議の目的と原則を述べているところで、「利益中心の経済」と「人間中心の経済」を対置し、新しい社会・経済システムが後者の実現を目指すものであることを強調しています。「我々の経済・社会活動の目的は、利益中心の経済の中で、限度なし、終わりなしに、夢中になって富を蓄積することではない。そうではなく、人間中心の経済の中で人間のニーズ、人間の権利、人間の安全を保障し、そして自然の循環を護って行くことであるはずである。」世界社会フォーラムが国連に移動してきた観があります。そういえば、世界社会フォーラムの発祥の地は南米ブラジル、スティグリッツも2004年の第4回(ムンバイ)にキー・スピーカーとして参加しています。

 日本では、似た者同士の間でお金をばらまきながらの政権争いに必死ですが、財界と米国依存の体質はどちらも同じです。コップの中の嵐に騒いでいるうちに、世界はこんなにも変わってきているのです。

 まずは、6月の国連首脳会議に注目すると同時に、日本の総選挙の争点のレベルアップにも注目して行きましょう。「二大政党」の枠にこだわっていては世界から取り残されてしまうでしょう。

 尚、英文原文は、ココをクリック下さい。

 以下,〈 G-192会議プロセス 〉、〈 G-192会議の目的と原則 〉の部分を翻訳したものを添付します。

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