« 2014年1月 | トップページ | 2014年4月 »

2014年3月31日 (月)

ユーロメモランダム2014: 深まる欧州の分岐とEU政策への抜本的代替案の必要性

2013年1月30日にユーロメモグループの了解を得て《ユーロメモランダム2013》を翻訳してから1年以上がたちました。遅ればせながらここに《ユーロメモランダム2014》の日本語翻訳版をお届けします。翻訳の遅れは当方の翻訳への着手が遅れたことによるものです。翻訳は合田寛氏と森史朗両名による共訳です。翻訳文書は、和泉通信ブログと、ユーロメモグループの下記リンクをクリックして下さい。

Izumi-tsushin Blog HP→ "http://izumi-tsushin.cocolog-nifty.com/blog/files/EuroMemo2014_Summary_Japanese.pdf"

EuroMemo Group HP→ http://www.euromemo.eu/euromemorandum/euromemorandum_2014/index.html 

欧州に物・人・金の自由な単一市場、単一通貨を実現・拡大し、効率的生産・販売市場、金融為替市場を作ってゆこうという目標の下、欧州統合は進められてきました。ところが今回の危機にあっては、欧州の金融機関等が米国発の金融投機商品の購入者として大きな損失を被りました。ここで求められるのがGDPの分配率を調整することによる、あるいは産業構造再編による総需要の拡大です。不況による所得の減少の他に、所得格差の拡大も消費・投資に回らない貯蓄の増加をもたらし総需要の減少をもたらします。こうした状況下でEUが採用した政策が緊縮政策でした。財政の不均衡問題に対してもEU全体での生産力の不均衡問題として捉えるのでなく、当事国の自己責任を問うことが第1になりました。

 昨年のユーロメモ2013では、①各国予算をコントロールするというかつてなく大きな権限を欧州委員会が得るに従って、EUの構造がますます非民主主義的なものとなってきていること、②北部中核諸国、特にドイツの、周辺諸国に対する立場が強化されたが、③賃金引き上げの抑制と、輸出超過額の増加に依存するドイツ経済ではEU全体のモデルとなることはできないことが主張された。 ④金融部門が肥大化し過ぎている現状(経済の金融化)は根本的に逆転されなければならない、⑤商業銀行業と投資銀行業は完全に分離されるべきであり、⑥持続可能な投資案件への資金供給をはかるために、公的および協同組合商業銀行が振興されるべきである、⑦投資銀行、ヘッジ・ファンド、プライベート・エクイティーファンドは、厳しく制限されなければならないとも述べられています。
 ⑧長期に渡る高失業率は今回の不況の特徴の一つでした。EUにおける、2012 年の公式失業率は10.6%でしたが、スペインとギリシャでは 25%でした。また、EUの若年者失業率 22.7%に対してスペイン、ギリシャのそれは 50%以上でした。⑨緊縮政策では、税の抜け穴を塞ぐのでなく、経費カットに焦点が当てられました。インフラストラクチュア・プロジェクトの延期あるいは中止、健康管理、教育、社会保障、福利厚生等の経常的経費(recurrent expenditure)の削減が行われました。⑩多くの国で、公務員の大幅削減も成されました。不景気と緊縮政策の重なりから最も大きな痛手を受けたのは最貧層の人々でしたが、危機に襲われた国では多くの中間層も影響を受けました。

 今年のユーロメモ2014では、①EU経済が、どうやら景気後退からの出口を見出したようだと情勢を前向きに評価しつつも、②北部中核国と周辺国の格差が広がり、③特に周辺部各国のひどい失業状況が目に見えて改善されることは期待できないとしています。(EUにおける2013年7月の失業率は10.9%、スペイン、ギリシャが27%、EU全体としての若年者失業率が23.4%、スペイン、ギリシャのそれは56%以上でした)そして④厳しい緊縮政策が社会的分極化を広げ、欧州各国間の生産能力に格差をもたらす産業再編をもたらしたとも述べています。

 欧州は先進国の中で景気回復が遅れており、また弱まりつつあるとはいえ国民の主権と人権を擁護する強い力を持つ地域です。それ故、政治・経済の矛盾が日米に先行して現れるとも言えます。

以上、

森史朗 2014/3/31

| コメント (0) | トラックバック (0)

« 2014年1月 | トップページ | 2014年4月 »