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2012年12月16日 (日)

2012年12月総選挙各党政策批判

 民主党の野田政権が、国会運営がにっちもさっちも行かなくなり、ついに解散総選挙に追い込まれた。当初(2009年)の選挙公約から大きく道を外れ、国民の支持を失った結果多くの離党者を出し、国会運営のためには自民・公明と連携するしかないところに来てしまったのが原因である。ここではまず、2007年以降の国政選挙の争点の推移と、選挙結果を振り返り、次いで、今回の選挙の争点と各党の政策を比較してみた。尚、政策評価にあたっては、スティグリッツ・米国コロンビア大学教授の評価視点を利用している。網羅的な検証はできなかったが、主要な政党の公約はひと通り読んだつもりである。投票日に掲載することになったのも残念なことであった。
(1)2007年以降の国政選挙を振り返って見る
① 2007年参議院議員選挙
 2007年の参議院選挙では、民主党が50議席から60議席に前進、自公両党は2004年の当選議席60から46に後退し、自公政権は参議院での「多数」を失うこととなった。以後二年半に渡る「ねじれ国会」の始まりであった。
 選挙では小泉構造改革路線への国民の不満が強まり、「二大政党による政権交代論」への期待の高まりが生まれていた。政策的にも、民主党はマニフェスト冒頭で、「自由競争と改革という美名のもと、国民は一方的に重い負担を強いられ、様々な格差が社会を壊そうとしている。国と国民の契約である年金、医療、介護さえ信じられない。」と述べ、消費税引き上げの凍結を含む「国民の生活が第一」のスローガンを打ち出し、「自衛隊のイラク派兵の即時終了」、「テロ特措法延長反対」等自公政権との「対立軸路線」を打ち出したことも功を奏した。
 しかし選挙での議席数の変動は大きかったが、得票率では2%以下での増減であり、民主の「大勝」も、参院選選挙区選挙の小選挙区制的性格によるものであって、勝利の基盤は脆弱であった。一方、自公政権は国政選挙での国民の信認の喪失という事態に直面しながらも、衆議院の解散を受け入れず、衆議院議員の任期満了に至るまで政権にしがみついた。ねじれ国会の長期化は政治・行政の停滞と、妥協による与野党間の政策の同質化をもたらした。

 ② 2009年衆議院議員選挙
 2009年の総選挙は、議席数の上では民主党の文字通りの大勝となり、ねじれ国会を解消した選挙となった。2008年のリーマン・ショック後の選挙であり、自民党でさえマニフェストに「近年の行き過ぎた市場原理主義とは決別すべきことも自覚しています」と書くほど従来の自公政治が批判される中での選挙であった。その中で民主党の社会保障施策の財源が争点となった。民主党は行政改革により捻出できると主張し、自公連合は「責任政党」の立場から消費税率の引き上げを主張した。
 2009年総選挙での民主党の議席数は、2005年総選挙での113議席(議席率=議席数÷定数=113/480=23%)から309議席(同、64%)へ196議席の増加となり、議席率で41%という膨大な増加となった。しかしこれも小選挙区制により変化が極端に拡大する傾向を示す例の一つであった。この議席の変化をもたらした得票率を見てみると、11%でしかなかった。一方、大敗北を喫した自民党は、谷垣禎一を野党自民党の新総裁に選出した。
③ 2010年参議院議員選挙
 国民の期待を背に出発した鳩山民主党政権であったが、公共事業の見直しで国民の支持を得た部分はあったが、行政改革等から予定していた規模での余剰財源が見いだせず、平成22年度の国債発行額は過去最大の44兆円となったほか、小沢、鳩山をめぐる政治資金問題、普天間基地の県外移設問題をめぐる不手際等が、民主党政権への期待を失わらせた。鳩山首相を継いだ菅首相は消費税率見直し議論を提起し、2009年の総選挙マニフェストと現行諸政策との乖離を広げた。私は、2009/11/18のブログで鳩山首相所信表明演説について、〈政官癒着批判あるも大企業増税視野に無く、消費税増税繰り上げも〉と懸念を表明していたのだが、現実になってしまった。
 2010年参議院選挙での民主党の獲得議席数は、2007年の60議席(議席率50%)から44議席(同、37%)へ16議席の減少となり、議席率で13%の減少であった。この変動をもたらした得票率の変化は5%の減少であった。ここでも参院選選挙区選挙の小選挙区制的性格が反映し、得票率の3倍の議席変動が確認された。
④ 2012年衆議院議員選挙へ向けて
 この敗北によって今度は民主党が参議院で「過半数」を失うこととなり、再び「ねじれ国会」が始まることとなった。そこに2011年3月11日、東日本震災が起こり、津波・原発事故への迅速な救援復興対策が求められた。しかし、菅首相は対応の不十分さを批判され退陣した。菅首相を引き継いだ野田首相は2012年、自民・公明・民主による三党合意を利用してマニフェストに反する「社会保障と税の一体改革関連法案」の国会通過を図るなど大連立を思わせる国会運営を行った。加えて民主党内の親小沢グループと非小沢グループとの対立が激化し、2011年8月の民主党代表選挙で非小沢グループの野田氏が勝利すると両グループの亀裂は決定的なものとなり、後に2012年央小沢グループは50名規模で民主党を離党し、新党「国民の生活が第一」を結党、その後、今回の選挙日程が決まってくる中で滋賀県知事嘉田由紀子のグループと合同することとなった。「日本未来の党」である。
 その他の動きとしては、地方自治体の長あるいは経験者を中心に国政に地方の声を反映させることをひとつの目的とする動きがある。2010年に大阪府知事橋下徹(現大阪市長)を代表に「大阪維新の会」が創設されたことに始まったもので、2012年11月、「太陽の党」共同代表石原慎太郎との会談によって「太陽の党」が合流することとなった。国と比べれば地方自治体の規模は当然小さく、そこで権限が集中している知事・市長職にある人からは、国のガバナンスが遅々としていて大胆さに欠けるものに見えるのであろう。政策の傾向として、原理主義的な傾向がある。経済政策で言えば極端な新自由主義、安全保障政策では軍事力行使を厭わない力の政策、原発の安全運用の可能性への信頼である。
(2)民主的な選挙制度と議会運営ルールの重要性
① 民主党政策の自民党政策化
 この間、いくつかの党の動きの中で目を引くのは、民主党の選挙公約への無責任さである。重要なものを上げてみると、第1は、何と言っても消費税引き上げ法案を可決したことである。民主党は、2009年総選挙時の政策集では、《具体的には、現行の税率5%を維持し、税収全額相当分を年金財源に充当します。将来的には、すべての国民に対して一定程度の年金を保障する「最低保障年金」や国民皆保険を担保する「医療費」など、最低限のセーフティネットを確実に提供するための財源とします。》と言い、消費税率の早期引き上げを主張する自公政権に対立するかのような姿勢を示しながら、2012年6月には自民・公明と組んで消費税率引き上げ関連法案を可決した。2014年4月から3%、2015年9月から更に2%引き上げ、10%の税率にするということになったのである。
 そのほか、環太平洋諸国の競争力の強い産業や大企業に、加盟国の市場を例外なく無条件に開こうとするTPP(環太平洋連携協定)を日米の大企業及び米国政府の言いなりに推進する立場にたった。また、普天間基地の移転問題、オスプレイ配備問題に於いても政策的には自民・公明と民主は重なってきている。
② 節操のない離合集散
 自民・公明・民主の3党が同質化してくると、政界の中に国民の情況も反映した閉塞状況が生まれ、主観的な民族主義のように、他者との差違を強調したり、指導者意識に引かれたりして派閥的な小グループが形成されてきているように見える。政策の違いが小さいことあるいは政策への関心が薄いことは政党再編にあたって、横断的に議員の移動が行われていることから予想される。
③ 国民の声を公正に反映する選挙制度
 もう一つの重要問題は、現行の選挙制度が小選挙区制度的であり、選挙をしても議席配分に民意が正当に反映していないことである。そういう環境の中で問題の解決を求められた時、私たちは選挙制度を信頼して社会変革に取り組んでゆくことはできない。しかも民主党は、今回の5議席削減に加え、選挙後に衆議院では75議席、参議院では40議席を削減するとしている。今以上に小選挙区色を強めようとしているのである。(みんなの党は、衆議院で180減、参議院で142減を主張。)共産党は比例代表中心の制度か、3~5人区の中選挙区制への改革を目指すとし、「身を切る」ならば、政党助成金だとしている。
 今回のように候補者が乱立した場合は、票が分散し当選ラインが低くなる可能性がある。2党で1人区を争うと(投票率100%として)当選するためには50%超の得票が必要となる。それが4党で争い、力も均衡しているとすると、当選するためには25%超の得票で当選し得るのである。多党化による不安定を避けるメリットはあるものの、国民の支持が小さいのに過半数以上の議員を要する政府ができることは民主主義に反することである。万一国会で安定多数を取るようなことになると、衆議院の解散もなく任期満了まで4年間、そうした政権が続くことになりかねないのである。
(3)今日の危機を克服するための基本的政策
① 世界の実体経済の成長が十分に回復していない状況下、国際的な連携のもとで景気刺激政策を取らなければならない。この12月10日政府は日本が2012年第2四半期を以ってこの15年間で5度目の不況期に入ったと発表した。この報道を受け、自民党の安倍総裁は日銀を批判し、金額限度なしの金融緩和を実施すべきだと求めた。
② 「財政健全化」の旗のもとで消費税を増税し、「雇用及び社会的保護を促進」するというのが消費税増税に賛成した自公民の戦略ということになるが、もたらされるのは個人消費の減少である。:緊縮政策の名目下、前者が後者に優先し、福祉、保険、教育、労働予算が切り下げられている。    2012/9米国連銀は量的緩和第3弾QE3に踏切るも、投資、雇用拡大に向かうか懸念がある。9/19日、日銀も10兆円の出動を决定している。民主、自民、維新の会は当面目標とすべき年間成長率を名目で3%、実質で2%を挙げている(みんなの党は、名目で4%成長を目標)。消費税のことを考えたり、失業、給与減問題を考えたりすると、達成困難か、達成できても短命に終わりそうである。
 景気刺激政策のポイントは、今回の危機の主要な原因であった所得格差、国際収支不均衡を小さくするようなやり方で成されなければならない。にも拘わらず、これらの党は、「世界で1番企業が仕事をしやすい国」(自民)、「解雇規制の緩和、市場メカニズムを重視した最低賃金制度への改革による労働市場の流動化」(維新の会)といった低賃金労賃政策を持つ為、格差が是正できないのである。
③ 道州制化は効率化だけでなく、「公的→私的」への転換の意味を持っており、制度化に賛成できない。市町村レベルの自治体は民営化の名の下に売却され、公的サービスの心を失ったサービスが拡がるであろう(例えば、保育園の民間委託)。
 道州制を公約としている政党は、賛成:自民党(5年以内)、みんなの党、維新の会
 反対:共産党、社民党
④ 原発問題
 原発問題には以下の考え方がある。何時の時点で原発をゼロにするのか、即時か、猶予付きかの違いになっている。
 1.人類として取れるリスクと取れないリスクがある。どんなにフェイルセーフを重ねても、どんなに習熟した技術者を育てたとしても、原発からリスクを無くすことはできない。確率は小さくできても、その確率に遭遇し、事故に至ったときの被害を受け入れることができるかということが問われているのである。国会で指摘されてもいた「いかにもありそうな事故に」備えることさえできないでいるのが現実なのである。東電や政府に責任を問うとしても、それで被災者の被害が消えるわけではない。汚染された環境は、その世界の食物連鎖の頂点に立つ人類の体内に取り込まれ、体内被曝を受ける。「今回の事故はお粗末なもので、本来ならば防げるものだった」ということで、被災者の納得が得られるものではない。使用済燃料の処理方法を確保出来ていないことも懸念材料の一つである。要するに、原発開発はとりえないリスクなのである。直ちに、原発の運用を止め、コストは多少高くとも自然エネルギーへのシフトを考えるべきである。そして、過剰消費型の生活スタイルを改め、低エネルギー社会を作ってゆかなければならない。共産党、社民党、私の立場。
 2.今後も事故のリスクは否定出来ないが、これからの「建設・運用・管理」技術開発で安全運用が可能。但し、安全性についての見極めに一定期間、あるいは一定の條件が猶予される。猶予が更新され核兵器のように実際には期限無しに使用される可能性あり。民主党(2030年台)、自民党(3年以内)、維新の会(2030年代)、未来の党(10年以内)、みんなの党(2020年代)
⑤ 領有権問題
 今回の選挙では、尖閣諸島・竹島の領有権問題にどう対応するかが問われた。こうした問題にはひとまず自国の領有権を確保するためにどういう直接的反撃をしてゆくかを答えないと、「そんな平和主義は敗北主義だとして話を聞いてくれなくなってしまう。今回の事態には中国と勧告の側にも責任があった。しかし、近隣に住んでいる人同士の関係に似て、「それをいうなら、これはどうした」とアラ探しの悪循環に入ってしまうのである。私たちは紛争解決のために戦争という手段を放棄するという、日本人が内外の多くの人々の血を流して得た知恵を思い出す必要がある。問題を解決するためには、テーマが広がってゆくことを覚悟して、両国の関係改善に連帯した記録を何度も確認してゆく努力が必要である。戦争の総括を中・韓・日共同で行うのも有益である。欧州連合のように欧州史についての共通教科書を学校で利用する方法もある。当然、教科書を編集してゆく共同作業が重要になってくる。こんなことを言うと、「解決済みの問題に、また譲歩のし過ぎだ」との批判をいただきそうだが、この点については、共産党の志位さんが良いことをいっている。《歴代の日本政府は、1972 年の日中国交正常化以来、一度も、日本の領有の正当性を、理を尽くして中国政府に主張したことがありません。領有問題を「棚上げ」にするという中国政府の提案に「合意」し、その後は、ひたすら「領土問題は存在しない」とかたくなに繰り返し、領有の正当性を理を尽くして主張してきませんでした。
 尖閣諸島をめぐる紛争問題を解決するために、何よりも重要なことは、「領土問題は存在しない」と、かたくなに繰り返してきた立場をあらため、領土に関わる紛争問題が存在することを正面から認め、冷静で理性的な外交交渉によって、日本の領有の正当性を堂々と主張し、解決をはかる立場に立つことです。尖閣問題での「外交不在」から「外交攻勢」に転じることこそ必要です。
 物理的対応の強化や、軍事的対応論は、理性的な解決の道を閉ざす危険な道であり、日中双方がきびしく自制することが必要です。冷静な外交交渉による解決に徹する必要があります。》
 共産党、社民党以外は、自民党の政策、《日米同盟の強化のもと,国益を守る。主張する外交を展開します。》、民主党の政策《海上保安庁などの警戒監視、警備体制を拡充し、尖閣諸島を始めとする領土領海の守りを固めます。》、維新の会の政策《海上保安庁の警備力強化、自衛隊の武器使用基準の見直し、国際司法裁判所の活用》等、力の政策が並びます。

以上

森史朗 2012/12/16

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