2012年5月15日 (火)

ザ・スクープ・スペシャルで「沖縄での枯葉剤使用疑惑」を大特集(テレビ朝日)5月20日(日)

 欧州の緊縮財政問題について論考を準備中で、ブログの更新ができていません。ご容赦願います。

 さて、今回は、沖縄での枯葉剤使用疑惑についてのテレビ報道が予定されていますのでご案内するものです。ベトナムでの枯葉剤問題以来、一貫して枯葉剤問題、ダイオキシン問題を取材報道してきた中村梧郎さんからご案内をいただきました。日米同盟のもとでの沖縄の役割、その中で沖縄に押し付けられた被害、しかもそれらが秘密裏に行われていたのです。

◎放送日時:5月20日(日曜日)、午後2時から3時半までの90分間、
◎放送局:テレビ朝日系
◎番組:ザ・スクープ・スペシャル「沖縄での枯葉剤使用疑惑」

◎中村梧郎さんからのメッセージ:
 「私もスタジオに出て鳥越俊太郎氏と共に解説をいたしますが、帰還米兵の証言に基づいて取材した『日本の汚染』という新事実のスクープ報道です。
ベトナムも韓国も同様の事態が明るみに出て、毅然としてアメリカの浄化責任を問うていますが、日本国は調査さえしないまま、『なかったことにしたい』という態度であることが気がかりです。」

 こういうドキュメンタリーをやる局も減ってしまいました。番組予定について少しでも情報を広めて頂ければ幸いです。

中村梧郎さんの関連記事

中村梧郎氏が枯葉剤米国キャンペーンで成し遂げてきたこと

中村梧郎著「母は枯葉剤を浴びた」「戦場の枯葉剤」を読んで

石川文洋氏、中村梧郎氏インタビュー…報道カメラマンが語る戦争と平和

以上、

森 史朗 May 15,2012

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2012年4月 2日 (月)

《 「地方自治」と「国民主権」の復興とは、  ・・・震災・原発問題福島シンポジウムに参加してきました。》

 東日本大震災が起こった3月11日から約1年経った3月24―25日の二日間に渡って開催された「震災・原発問題福島シンポジウム」に参加してきました。知人の研究者の方からお誘いがあり4人で誘い合って参加したものでした。主催は経済理論学会、経済地理学会、日本地域経済学会、基礎経済科学研究所、協賛に、政治経済学・経済史学会、後援に、福島大学うつくしまふくしま未来支援センター、日本経済学会連合と多彩でした。多くの学術組織に参加している研究者が震災・原発問題の原因究明と復興のあり方の解明に貢献しようとする努力の一環をなすものでした。

 シンポジウムは、第一に、震災から1年たった今、研究者の問題意識が現場での要請から外れていないかどうかの点検でした。その為、初日のプログラムは現場で復興に携わってきた三人の方からお話を伺いました。南相馬市長は「原発周辺自治体における避難と放射能との戦い」、福島県農民連事務局長は、「被曝した大地と農産物、『全面賠償と除染を求め直接行動』」、音楽家の大友良英さんは、「8・15世界同時フェスティバルFUKUSHIMAに全国から1万三千人、ネット同時発信に全世界から25万人参加」と言うテーマでした。

 中でも、農民連の根本敬事務局長からは下記のような厳しい状況が述べられました。
・「あなた方被災者は、どんなことがあっても人間として扱われる権利があります」と言うメッセージを聞いたことがない。被災者に人権はない。
・被災しているかどうか分らない災害。なぜ、未だに詳細な「汚染マップ」が作られないのか。

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2012年3月23日 (金)

ギリシャのデフォルトリスクは回避したが、問われる実体経済の動向…所得格差縮小の経済政策を

 ここのところ各国の株価が上昇してきています。特に欧米及び日本の株価が順調です。一般には、ギリシャ財政危機を始めとする欧州財政危機・ユーロ危機の危機打開への道筋が見えてきたこと、日米の経済指標に改善が見られたこと、が要因として挙げられています。しかし、戻り歩調は一本調子ではなく、ひきつづき警戒感は払拭できないでいます。
 3月20日は、ギリシャ国債が、大量償還を迎える日として注目されていました。償還額は145 億ユーロ(約1兆6千億円)で、元本の70%は、ヘアーカットされました。民間銀行の足並みが揃うのかが心配されていましたが、それらは杞憂に終わったようです。
こうして、ギリシャの第2次支援策はイベントリストとしての、ギリシャ国債デフォルトは抑えこむことができました。しかしこれからは、実体経済の動向が問われてくるでしょう。例えば、ギリシャでは、緊縮経済によって財政再建を急速に進めてゆくことが求められます。2020年の債務残高GDP比率を120.5%まで圧縮することが求められているのです。最近の同計数は159.1%(2011年9月末)です。失業率は、公務員の削減、消費の縮小等により景気後退が進み失業者は19%を超え、青年の失業率は48%にのぼります。
 2月22日のしんぶん赤旗主張「ギリシャ追加支援決定」は、「危機に直面した国に責任を追わせるやり方は限界だ。ギリシャはマイナス成長が連続3年を超えている。これでは債務残高の圧縮も進まない。」と主張し「ユーロ危機の基本要因として、元々輸出力の強いドイツなどととの間にある構造的な不均衡が指摘されてきた。しかし、単一通貨のもとでは為替レートで不均衡を調整することができない。ドイツは経済力に相応しい負担を分担すべき特別な役割を持っている。」としています。そして、結論として、「欧州の統合は元々、欧州の平和を確保するために構想、推進されてきた。ユーロ危機を乗り越える上でも、統合に向けた協力のあり方が問われている。」と、欧州統合強化の方向で英独仏といった大国が、積極的に負担を負ってゆくことを求めています。とかく議論がギリシャ・南欧のユーロ離脱、或いはユーロ解体に話題が向き、財政脆弱国の自己責任が問われる中にあってユーロ財政問題の正鵠を射るものとなっていました。

 ギリシャ追加支援決定の報を受けて、同様の見解を示したのは、2月23日付の中国新聞社説でした。

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2012年2月 3日 (金)

11の国際/地域機関の長による「行動の呼びかけ」

 今年の1月20日、IMFの専務理事を始め11の国際/地域機関の長が個人的立場ながら連名で、成長と雇用増のための「行動の呼びかけ」を発表しました。この呼びかけは、世界経済フォーラム(ダヴォス会議)の国際問題グループとして集まった11名によるものですが、それぞれが代表する機関は、IMF、世界銀行、WTO、OECD、世界保健機構(WHO)、国連世界食糧計画(WFP)、国際労働機関(ILO)、三つの地域開発銀行と、国際金融機関だけでなく、経済社会国際機関が加わっているのが特徴で、経済政策を社会政策に視点を置きながら検討してゆこうとする姿勢が見られます。G20金融サミットを軸とした問題解決を目指しながらも、政策の国際的調整及び推進を担う国際機関が相互に連携を深めることは有効なことに思われます。

 呼びかけは、2012年に入るにあたっての懸念として、成長の減速、深刻な失業問題、保護主義の強まりを挙げ、こうした懸念を解決するために我々が共有する目標は、「世界のあらゆる地域で、成長と雇用を強め、生活の質を高めることである」としています。そのために留意すべき点について、「新興の世界で進んでいる経済の転換を支えること」、「金融機関に自信を回復させること」、「欧州の財政の枠組みを安定させること」等と共に、最近の緊縮財政政策の行き過ぎを意識して、「財政を強化するにあたっては、成長と雇用の見通しを減退させるのではなく、むしろ促進するように工夫すること」が挙げられています。

 社会保護については、「各国は、社会保護と、公共部門での効率性とを共に、改善しなければならない」としていますが、こうした一般論のもとで、社会保護の実質的な切り下げが行われることも多く、国ごとには、もっと具体的な議論が必要でしょう。呼びかけは、「職を増やし、人的資本に投資するのは、格差問題に取り組むのに最も有望な方法である。われわれは、国際労働機関、その他による政府を支援する仕事を支持するものである。逆境にある最も脆弱な人々に、コスト面で効率的な社会政策のクッションを提供することを含め、政府が現実的な政策オプションを検討するのを支援するのである。投資のターゲットは、技術と教育、そしてこのようにして人々に未来への装備をすることである。格差の拡大は、いっそう包括的な成長モデルの検討を求めている。われわれは、実質的な生活水準の具体的な改善と、より強い社会の一体性を実現させなければならない。」と、社会政策論を展開します。

 IMFのガーソン財務局次長が、日本の消費税率について「15%まで引き上げる必要があると24日の記者会見で述べていたといいます。「社会保障と税の一体改革」の名のもとでの消費税率引き上げは、社会保証給付等の切り下げと、大衆増税の一体改悪であり、国民の消費を低下させ、成長を阻害するものです。ラガルド専務理事の参加しているこの呼びかけの趣旨からしても、日本政府に対する慎重な検討を求める呼びかけがあって然るべきです。まずは、ラガルド専務理事のIMFでの指導性の発揮と、国際機関の中でのこうした方向での国際機関の協調の推進を期待したいと思います。

 「行動の呼びかけ」は、一部新聞報道はありましたが、全文の翻訳は見当たりませんでした。そこで、私が翻訳したものをPDFで読めるようにしました。参考にしていただければ幸甚です。なお、和訳にあたっては、合田寛氏のご協力をいただきました。

→ “Call to Action”英文原典

→ 「call_to_action_japanese_version.pdf」をダウンロード  「行動の呼びかけ」

 今年はIMF・世銀年次総会が10月12-14日に東京で開催されます。「大震災から力強く復興するこの国の姿を、世界のみなさまに見ていただくために。日本独自の高い技術やサービス、効率を追求した会議運営を通じて日本経済の底力を肌で感じてもらうために。」とホームページには意義付けられていますが、消費税率引き上げを許さないことが世界に経済社会危機克服の方向性を示すことになるのだと思います。

→ IMF ・世銀年次総会2012

以上、

森 史朗

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2012年1月26日 (木)

2011年、中東民主主義革命(2010/12-2012/1)

     総括       アルジェリア
     イエメン      イラク
     イラン       エジプト
     オマーン      クウェート
     サウジアラビア  ジブチ
     シリア  スーダン、南スーダン
     チュニジア    バーレーン
     モロッコ      ヨルダン
     リビア ( アイウエオ順 )

《総括》
 今、中東が内側から変わってきている。イスラム教は、もともと他の宗教に寛容であったが、イスラム原理主義と対抗する中で、イスラム教への帰依を国民の義務にするようなことがないことを明確にするようになってきた。

 そして、留学、出稼ぎ、インターネットを通じて基本的人権、国民主権、経済社会の公正を当然のこととする権利意識が成長たしてきたのだと言えよう。そうした成長した意識は、三〇年、四〇年という長期独裁政権に、閉塞感を感じていたのである。勿論そこでの「権利意識」はイスラム的な「社会の権利」として捉えられていると思われるが…。何れにせよ、その意味では、今回の変化は早晩予想されていたものといえる。そして、今日の経済社会危機が国民にもたらした高い失業率(各国9~14%)、暮らしの貧困、特に最近顕著になってきた投機資金参入による食糧品価格の急騰が、きっかけとなり、国民が革命に脚を踏み出したのである。そして、その第一歩を踏み出したのは、北アフリカで最もヨーロッパ的な国として知られていたチュニジアであった。ジャスミン革命の端緒的成功は、チュニジアの民にできたことは自分達にもできるはずだという自信をもたらし、変化への条件を満たしていた周辺国にあっという間に広がっていったのである。

 ここにインフレと投機の話が出てきた。このテーマは、一般に景気刺激政策からの出口戦略の判断時期の問題として議論されがちであるが、景気刺激策として初期に投下される資金についても言える話なのである。生産への投資に誘導したいとして供給したマネーが過剰流動性となり、不動産やエネルギー、食糧などへの投機資金となる。中東民主主義革命は、今回の経済社会危機の深さを測れないでいる資本と政治の姿を映し出しているものでもある。

 しかし、中東民主主義革命への道は平坦ではない。一国レベルの民主的政党を形成するためには時間がかかる。部族主義や宗派対立が持ち込まれるリスクもある。宗派対立はしばしば国境を超えた干渉となる。エネルギー問題が絡む地だけに、欧米の干渉も大きい。「中東現代史を振り返り、中東問題を考える(3/5)」でも明らかにしたが、多くの要因による外部からの干渉こそ、中東の民主化を遅らせてきたものなのである。

 イランが、米国の干渉を排し、自国の自主性を守ろうとしたことは擁護されるべきと考えるが、イランの現政権はイスラム原理主義ともいえるかたくなな保守性を持ち、その実現のために、不透明な核開発を行ない、国内での野党勢力の弾圧を行うことは許されることではない。例え、核非拡散条約が核非保有国にとって片務的なものであるという批判が妥当であるとしても、それで許されるものではないと思われる。

 一方、イラクにとって、昨年は、米軍が2基地、4千人を除いてイラク駐留を完了した年になる。米軍に依存してイラク再建に従事してきた政府は自らの手で自国の政府と国民の安全と経済の発展を維持することはできない。それができるようになるためには、歴史的な経験と、その文化としての蓄積が必要である。

 5月1日にオサマ・ビン・ラディンがパキスタンで殺された。イスラム主義の象徴のようにされたこともあったビン・ラディンだが、今回の中東民主主義革命を比較すると、その保守性、特殊性が明らかである。

 今回は、中東諸国16カ国の運動の1年間の動きを国別にまとめてみた。各国の失業率は、ニューヨーク・タイムズからの引用である。事実関係の報道も同紙による所が大きい。革命前史と言う感のある、各国の歴史や地理的問題に触れている項はウィキペディアによった所もある。掲載順序はあいうえお順としてある。年表の域を出ないものもあるが、それはそれで、ドキュメンタリーな感覚で中東の胎動を感じ取れるのではないかと思われる。

 チュニジア、エジプト、リビアから始まった革命は、今、焦点をシリア、イエメンに移している。既存の政権を倒す以上に、新しい政権を作ってゆくことは難しい課題である。チュニジアは、民主主義的社会への移行という課題でも中東をリードする役割を担う位置に在るように見える。エジプトでは強大な軍と、穏健派イスラム主義と言われている中での保守主義が民主主義を歪めてくるリスクがある。リビアは民兵を抱えている部族から武器を取り上げることができず、部族社会の影響を強く残すことになるリスクを抱えている。シリアでの対立はバアス党アサド政権の継続か廃絶かというものであり、平和的な解決は期待しにくい。国連をベースにシリア国内での武力行使を許さない体制を作れるかどうかが問われてくるが、そうした関与自体を干渉とする見方もあり、国際世論の形成が鍵となるであろう。イラク、イランは、その契機は他の国々と異なる所があるとしても、自国政治制度と文化を民主主義的なものにすることを課題としていることにおいては変わりない。バーレーンの動きは一旦収束に回ったように見える。しかし、問題の構造はシリアに似ており、現在の収束内容では長期的な安定は期待できない。4月27日ニューヨーク・タイムズは、「攻撃にさらされたアラブのリーダー達は、やめるよりも闘うほうが良いと決意した」で、今後は、チュニジアやエジプトのように逃げたり、辞任したりするよりは最後まで弾圧する方を選ぶだろうとしている。彼等の学んだものは、次の三つである。①限られた譲歩、②外国やアルカイダ等の第三者に対する批判、③いかなる手段をとっても、街頭から人々を追い払うことのできる治安部隊である。中東民主主義革命への道は一層険しいものになろうとしている。

 そんな膠着状態の中で、モロッコが、国王の提案により首相権限を強めるための国民投票を7/1に実施し93%の賛成票を得て成立した。国民の動きもさほど大きくなかった国で、国王が先手を打ったと言えそうだが、血なまぐさい一歩でなく、妥協の一歩であったことは歓迎したい。サウジアラビア、クウェート、オマーンは、豊かな石油収入からの、モロッコ、ヨルダンについては燐鉱石収入からの追加的還元を行うことで、国民の批判が大きくなるのを防いでいる。しかし、今日の国家運営を行なってゆく場合に、世襲制の王政では限界があり、長期的には共和制或いは名目的な君主を伴う立憲君主制の政治形態への移行は避けられないと思われる。

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2011年12月30日 (金)

2011年、年末のご挨拶:日本の道を誤らせる消費税増税

 皆様、

寒さの厳しくなってきている折から、健康にお過ごしでしょうか。私は風邪を引いてしまいましたが、例年のものよりしつこいようで閉口しています。さて、ブログに2ヶ月以上のブランクを開けてしまいました。

 理由の一つは、新日本出版社発行の月刊経済理論誌「経済」の2月号に掲載する論文を書いていたことです。テーマは、「転換期にあるG20と、スティグリッツの戦略…資本主義の新しい枠組みへの模索」A5版16頁と、量的にまとまっています。内容的には、①この11月に開かれたカンヌG20を中心としてG20の6回の足跡と、スティグリッツが「国連報告」「パリグループ提言」を通して行なってきた今回の危機の要因分析をまとめています。同月号は「2012年の日本経済をどう見るか」という特集にもなっており、関心を持って読んでいただけると思います。発売は、1月8日からで、価格は、税込980円です。

 理由のもう一つは、合田寛氏が書かれ、この12月10日に発売された、税制改革についての著書、「格差社会と大増税・・・税の本質と負担のあり方を考える」の書評を書いていたことです。実は、12月29日の朝3時頃掲載したのですが、その日の朝刊に、民主党総会の結果の報道が載っていました。民主党は、税制調査会、と社会保障と税の一体改革調査会の合同総会を開き、消費税率を2013年10月に8%へ、2015年4月に10%へ引き上げる方針を提示したというのです。結論は持ち越しましたが、率と時期については原案でいいという意見が過半数を占めており、持ち越しも、「増税には反対しないが、今決める必要はない」という争点隠しに利用しているにすぎないでしょう。法人税実効税率5%の引き下げは11月に成立してしまいました。このままでは国民として何もできない内に消費税増税も決まってしまうでしょう。(30日午後追記:「持ち越し」と報道された29日のことですが、税制調査会等の合同総会が再度開催され、引き上げ時期を半年づつ遅らせ、2014年4月に8%、2015年10月に10%へ、引き上げることで合意したと報道されました。)
 是非、書評と、合田寛氏の「格差社会と大増税」を読んでみてください。民主党、自民党、財界の推進する法人税引き下げ、消費税増税、富裕者優遇税継続は、今回の経済危機をもたらしてきた政策の流れに与するものです。震災復興、原発事故対応、経済危機、エネルギー危機、食糧危機と、課題は時間の無駄遣いを許しません。来年こそは本当の問題解決に向けて前進が勝ち取れる年にしたいものです。

→ 書評:「格差社会と大増税・・・税の本質と負担のあり方を考える」を読んで

森 史朗(和泉通信)2011年12月30日

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2011年12月29日 (木)

書評:合田寛著「格差社会と大増税…税の本質と負担のあり方を考える」を読んで

《待ったなし。「消費税の本格的増税論」に対抗する税制改革運動を》
書評:合田 寛著「格差社会と大増税…税の本質と負担のあり方を考える」
   シリーズ◯民主的改革のための経済学⑤
   学習の友社、2011年12月刊、四六版ハードカバー 税込 2,100円

はじめに.「財政健全化」のもとでの「雇用及び社会的保護推進」

 「財政健全化」への圧力が世界中で強まっています。2010年6月のトロント金融サミットから言われ始め、ギリシャのデフォルト危機で揺れた今回(2011年11月)のカンヌ金融サミットでもアクションプランで最確認されました。「具体的にはオーストラリア,カナダ,フランス,ドイツ,イタリア,韓国,スペイン,英国及び米国は,明確で信頼に足る財政健全化計画によって2013年までに 2010年の水準から財政赤字を半減し,2016年までに公的債務残高を対GDP比で安定化または削減する」というのです。不安定な財政(=過大な負債を負った財政)を抱えていたのでは持続可能な景気の回復を妨げるというのが理由のようですが、こういう状況でどういうことが起こってくるのでしょうか。最近欧米の新聞によく出てくる単語に “an austerity Policy” というのがあります。「緊縮経済政策」です。国の借金が大きすぎることを理由に、格付け会社から国債・保証債の格付けを下げられ、投機筋から売りを浴び、市場で資金調達ができなくなり、政府は緊縮財政政策を余儀なくされます。しかし、緊縮財政政策をきちんと行ったとしても、必ずしも問題が解決するとは限りません。増税したとすれば、増収税金による債務返済により国民購買力の低下が起ります。そして、返済を受けた経済主体が返済受領金をその他の投資に振り向ければ、運用資金量は変わりませんが、返済を受けた人が、再投資に向かわず、例えば貯蓄に向かったとすると、そこでも消費の減少が発生します。その他、貸出金利上げによるインフレ(自国通貨購買力低下)、社会保障供与の削減により捻出した資金の返済による政府支出減、これらの結果景気の後退が起ります。過大な負債が、維持すべき景気の回復を妨げる前に、緊縮財政自体が景気回復の芽を積んでしまうのです。このカンヌ金融サミット最終宣言では、冒頭部で、今回のサミットの重要な課題として「雇用及び社会的保護推進」が強調されていますが、これだけ公債発行高の圧縮を課題として強調しながらでは、現状を維持することでさえ困難だと思われます。

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2011年10月18日 (火)

広がる国際準備通貨問題の議論とパソードの覚書試訳

1.世界に鬱積する民集の不満と3つの問題
 昨年12月に北アフリカ、チュニジアのジャスミン革命に端を発した貧困と格差と失業の解決を求める民集の運動は、欧州の政府債務問題に伴う社会保障の切り下げ、長期化する米国での高い失業率(9%強)、米国連邦債務上限引き上げ法案に伴う社会保障カットへの動きに対抗して、全世界に広がってきています。日本では街頭行動は、まだ活発とは言えませんが、東日本大震災の被災者のみならず、国民全体が不満と鬱積感を抱えています。
そんな中で国際的に広がってきている考え方が、三つあります。

① 経済と社会問題の中核をなす雇用問題
 一つは、雇用を社会の中に居場所を見つける、人間の尊厳の中核と位置づけ、労働条件の改善と、失業の削減を推進しようとするものです。EUでは早くから取り組まれてきましたが、現在はILOが、ディーセントワークの課題として取り組み、国連として世界レベルで取り組まれています。

② 金融業務の優越的地位の見直しと正当な役割と処遇の回復 
 もう一つは、その機能と位置から収益力が高く、失敗しても税金で救済してもらえる産業となってしまっている金融業を、投資と貯蓄を効率よく結びつける潤滑油役という本来の役割に回帰させることです。最近EU委員会で採択され、米国でも議会に提出された金融取引税はその具体化の一例です。

③ 超国家的国際準備通貨制度への移行
 三つ目は、米国の覇権体制を支える仕組みの一つであり、貧しい国から豊かな国へ富の移転を行う仕組みとなっている、現在の米ドル単一基軸通貨制ないしは米ドル・ユーロ複数基軸通貨制から、超国家的国際準備通貨制度に移行してゆくことです。この問題は、まだ十分な議論がなされておらず、コンセンサスができていませんが、その結果が上述した二つの問題の解決にも大きな影響を与える重要なものです。
米ドル単一基軸通貨制の問題はこれまでも話題になって来ましたが、今回の危機が今までになく深く長期に及ぶものになったこと、その危機が米国発であったことから、国際通貨制度に対する率直な批判が行なわれるようになりました。今日は、最近の二つの新聞で採りあげた国際金融制度改革についての記事をご紹介します。

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2011年10月 5日 (水)

ラガルドIMF専務理事とゼーリック世銀総裁の9月総会前スピーチに見た景気動向と11月G20の課題

《 目次 》
 はじめに
  出典
1.ブレトンウッズ体制の位置づけと今日の問題点
2.民主的ガバナンス
3.今日の危機・変化の捉え方
4.危機克服への展望と課題

《はじめに》
・この文章は、9月23日に米国ワシントンDCで開催されたIMF-世銀年次総会に先立って、9月14日から15日にかけて行なわれた、ラガルドIMF専務理事と、ゼーリック世銀総裁によるスピーチの内容をスティグリッツ或いはパリグループの見解と比較検討したものです。文章は4節から構成されていますが、各節が3項ずつに分かれています。「①パリグループ」は、この文章の本筋に当たる部分で、ラガルドIMF専務理事、ゼーリック世銀総裁の順にスピーチの各節に当たる部分を比較検討しています。黒のフォントを利用しています。②③は、ラガルドIMF専務理事と、ゼーリック世銀総裁スピーチの引用したものを記してあります。前者に青、後者にオレンジ色を利用しました。ふたりともこの文章の節の順番に書いているわけではないので、各節の掲載引用文の順序は原典と異なります。ブログ本文には、①の部分だけをまとめたものを掲載し、②③を含めたものは、ダウンロードするようにしてあります。
・IMF、世銀はWTOと共にブレトンウッズ体制の中核機関を構成しているだけに、その主張に大きな差はないはずですが、今回の二人の発言にはかなりの違いがありました。ラガルドIMF専務理事の発言には、経済政策が社会にもたらす負荷への配慮がありました。ゼーリック世銀総裁もこの問題には触れていましたが、市場、特に民間市場への信頼が厚く、必要な規制や配慮への認識が足りないように見えました。政治的な背景にサルコジ仏大統領を持つラガルドと、ブッシュ前米大統領を背景に世銀総裁になったゼーリックとの違いとも言えましょう。
・スピーチは危機感に満ちており、決断と協調が求められていますが、協調してゆくためには危機克服のための政策的合意が必要です。その合意がまだできていません。11月3-4日に掛けてG20がカンヌで開催されます。会議を主宰するサルコジ大統領は年初にパリグループから提言を受けていますが、国際金融制度改革を含めて、問題解決の道筋についての合意レベルを高めてゆくことが求められています。
・例えば、ギリシャを始め南ヨーロッパ諸国に厳しい緊縮財政を求めたとすれば、国内の社会的緊張が高まりを予想され、投機筋の攻撃を受け為替安、債券安、株式安のトリプル安になることも想定されます。そうなれば日本でも円高が進み、業績悪化見込みによる株式の下落も起こり得ます。緊縮財政を取らなければ、それはそれで同じことが起き得ます。これでは、どう転んでも景気の悪循環から抜けだせません。雇用と景気回復の信頼できる見通しと國民の理解、国際社会の協調と決意が不可欠です。投機筋に隙を与えない強力な協調体制が必要であると同時に、根拠のある見通しが必要なのです。しかし、政治が事態に追いつくことは難しく、本当に危機を克服してゆくためには、もう少し痛い目に合わないといけないようです。

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2011年8月30日 (火)

「スティグリッツ国連報告」から「パリグループ提言」へ…転換点にあるG20とスティグリッツの戦略

8月20日、ATTAC Japan 通貨取引税部会主催の講演会に招かれ講演をしました。個人的には、要領の悪いもので、反省の気持ちが残ってしまいました。しかし、質疑では時事問題から理論問題まで興味深い討議ができました。

さて、ここに掲載した講演録は、講演の下書きに加除訂正を加えたものです。
2-②「G20に求められる時代」…G20の課題を考える
2-③「スティグリッツの戦略」
11ー「今回の危機に本当に対応することとは」といった新しいテーマに取り組み、スティグリッツの考え方をまとめたものとしては、自分としては、最も整理されたものになっています。以下、目次だけ表示し、本文は添付ファイルを開いてください。

添付ファイルを開く → 「attac.pdf」をダウンロード


《「スティグリッツ国連報告」から「パリグループ提言」へ
…転換点にあるG20とスティグリッツの戦略》
《目次》
1.「スティグリッツ国連専門家委員会」、「パリグループ」とは?
①一連の国連開発会議とスティグリッツ国連専門家委員会
②第二次大戦後国際金融制度の変遷…G20まで
③2011年カンヌG20とパリグループへの諮問
2.国連報告、パリグループのG20への評価と、G20への危機意識
①スティグリッツ国連報告とパリグループ提言でのG20への評価
②G20に求められる「時代」
③スティグリッツの戦略
④効率性に裏打ちされた倫理観
3.効率の良いグローバルな利益の実現と、新自由主義批判
  ①効率の良いグローバルな利益の実現
  ②スティグリッツとパリグループの新自由主義批判
4.世界総需要のマイナス要因となる所得格差と、外貨準備高需要
5.貯蓄と高成長分野との間の資金循環の重要性
6.G20は国際通貨金融システムの包括的見直しを開始すべきである
①《国際通貨金融制度改革への強い意欲》
②国際通貨金融制度改革についてのスティグリッツの主張
7.経済実績と社会発展についての適切な尺度による評価と実行
8.進んだ金融部門改革
9.開発計画
10.グローバルガバナンスの改革
11.今回の危機に本当に対応することとは

以上

森 史朗  2011/08/30

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2011年8月12日 (金)

新自由主義化へのシフトが進む昨今の国際経済・・・しかしそれでは危機は解決できない

和泉通信の森です。今回は、昨今の為替市場の混乱に見られる新自由主義の復活と講演会の再度のご案内です。

《新自由主義化へのシフトが進む昨今の国際経済
      ・・・しかしそれでは危機は解決できない》

①2009年4月ロンドンG20から2011年11月カンヌG20へ
南欧諸国の国債発行での合意成立、米国での国債発行額上限法案の成立により一時収まるかに見えたマーケットが一向に落ち着きを見せない。2009年に景気が回復傾向を見せるや、2008年から2009年にかけての景気刺激政策で、見事な協調を見せた国々が今や、お互いを引っ張り合っている。階層間の負担をめぐる抗争の強まり、公債の増加に対する持続可能性への懸念増大を主な要因に政策が内向きになってきているのである。2009年4月のロンドンG20の時には影に隠れていた新自由主義であるが、最近大きく復活してきている。フィトゥッシ、スティグリッツから提言を得たサルコジ大統領だが、自らが新自由主義を払拭できるかが問われている。

②米国国債発行額上限法案
米国では、国民健保給付削減等の政府支出の削減を求める共和党と、富裕層向け減税打ち切りによる増税を主張する民主党の間の米国債のデフォルトを賭けての構想は、2兆1000億ドルの増加という双方の妥協に一段落したが、今後十年間に1兆ドルの財政赤字削減が求められており、本題は先送りされているに過ぎない。議会での劣勢を背景に新自由主義的政策を強いられた形である。一方で、米国は、QE3(量的緩和政策第3弾)まではゆかなかったが、2013年までのゼロ金利策を決め、過剰流動性をつくりだしている。国債の格付け引き下げまでされた国が金融緩和策をとれるというのは基軸通貨国故であろう。

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2011年8月 3日 (水)

8月20日、ATTAC Japan 通貨取引税部会主催の講演会で講演します

 日本は原発事故の解決と大震災からの復興が遅れ、遅れた分だけ被害も膨らんでいるという状況にあり、加えて政局が流動化し、問題解決の一層の遅れが必至となってきました。特に原発をめぐる事故は、事故や被害の全容の把握が難しく、原子力エネルギーの恐ろしさを示しました。こうして、ややもすると目が国内に向き勝ちになってしまうのですが、世界経済の動きも荒れています。

 北欧の一部及び南欧全般での公的債務危機、米国債務上限法案をめぐっての米国によるデフォールトのリスクを賭けた政争(現地7/31にようやく両院指導部の間で合意が成立したとの報が流れましたが、今後も格下げ等がガ予想されえます)等により、ユーロ安、米ドル安が続き、相対的円高現象が起こっています。投機家に格好のカジノが与えられたのです。競争的為替切り下げ政策が導入されているかの如き状況下、日本はもっと円安レベルでの為替相場の安定を主張しなければならない時です。このような状況を無策のまま放置しておくことは、震災/原発事故からの復興計画への障害を放置することになります。勿論円高を積極的に歓迎して対応して行く政策もありますが、今の日本には、何を目指してゆくのか政策が見えません。

 スティグリッツは、「国連報告」で、国際収支を安定させること、国内外での所得格差を縮小してゆくことにより世界総需要を拡大してゆくことが、2008年来の金融経済危機解決への道であると主張しました。そして、かつて「もっと働き、もっと稼ごう」をモットーとした新自由主義者として知られているサルコジ大統領が、スティグリッツを、今年のG20の為諮問委員会議長二人のうちの一人に選んだのです。もう一人のフィトゥッシ議長も「国連専門家委員会」のメンバーでした。

 今、この時点で危機の原因と対策を見直してみることは単に震災復興の為だけでなく、日本全体の経済政策を検討してゆく上で有効なことと思われます。

 そこで、8月20日(土)、13:30 - 17:00の予定で講演会を行うことにしました。
 会場は、文京シビックセンター地下一階アカデミー文京学習室(東京都文京区春日1-16-21)
 交通最寄り駅:都営大江戸線春日駅、丸ノ内線後楽園駅、南北線後楽園駅、各駅よりすぐ。
 参加費:500円
→ 「0820.pdf」(チラシ)をダウンロード

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2011年7月25日 (月)

半澤さんの書評を受けて…「スティグリッツ国連報告」を国際金融制度史の中で

 いつも、興味深い記事を掲載されているブログ、「リベラル21」が、「スティグリッツ国連報告」の書評を掲載して下さいました。スティグリッツに対する批判も示され、皆さんにも有意義なものに思われました。評者の半澤さんのご意見を補強したり、一部誤解に反論したりした返書を出させて頂きました。書評と返書の双方を読んでいただければ幸いです。

→ 2011.07.24 『スティグリッツ国連報告』―反・市場原理主義で世界金融を分析すれば―


半澤健市様(「リベラル21」のコメント欄に打ったもの)

 この度は、拙訳の「スティグリッツ国連報告」に対し適切なご批判を含む書評をいただき、ありがとうございました。ご批判の中で、「『無い物ねだり』という批判を承知の上でいう。この報告書には、世界経済への『歴史的視点』が完全に欠落している。現行制度の欠点や経済『理論』と『政策』の失敗を、率直に認めていながら、その由来には決して言及しない。」とのご指摘は正鵠を得たものと考えています。私もこの一月程、スティグリッツの論理を戦後世界経済史の中に位置づけようとしてきました。図表も入るので、詳細は本日(7/25)掲載予定の「和泉通信ブログ」をご覧いただければと思います。
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《第二次大戦後国際金融制度の変遷…G20まで》

 「dai2jitaisengo_kokusaikinyuseido_hensen.pdf」をダウンロード

 《表1-②.第二次大戦後国際金融制度の変遷…・G20まで》は、国際準備通貨制度を中心に国際金融制度の変遷を整理したものである。資本主義経済は戦後拡大したルーブル経済圏との対抗圏として特別な役割を果たした。ブレトンウッズ体制は、米国の圧倒的な経済力に依存した体制だった。戦災被害が小さかった上、フォーディズムのような生産性の高い生産力を持ち、米国は欧州やアジアの資本主義経済の戦後復興支援と、健全な経常収支維持の双方を可能にした。制度的には、金米ドル為替本位制固定相場であった。

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2011年6月24日 (金)

G20農相会議でサルコジ大統領が、市場規制による食料安全保障を主張。日本は?

 毎日新聞(電子版)によれば、農業一次産品価格の投機的な高騰を前に、市場規制による食料安全保障をフランスのサルコジ大統領が主張したそうである。
 サルコジ大統領は、6月22日から二日間の日程でパリで初めて開催されたG20農相会議で「規制のない市場は市場ではない、食糧の安全保障を確かなものにしなければならない」と述べ、金融危機の再発防止のために各種規制を取りまとめたことを念頭に、「金融市場で達成できたことを農産物市場でもやらなければならない」と、規制の具体化を求めたという。極めて妥当な対応である。
 同会議では、50年までに世界の食料生産を70%増やすことを目標に、食料需給に関する情報収集と分析を行う「農産物市場情報システム」(AMIS)設置などをうたった閣僚宣言を採択する。ただ、農業投資の促進や農産物投機の抑制をめぐっては、具体性を欠いた合意にとどまりそうだという。農産物価格の乱高下を招く投機の抑制については、G20財務相会議に検討を求めるが、国際市場を抱える米国や英国の反発で紛糾も予想されるとのこと。
 また、米英の組と、フランス、或いはフランスとドイツの組が対抗する図を見ることになるのかも知れない。今年のG20の主宰者役を務めるサルコジ大統領が、スティグリッツとフィトゥッシの二人を共同議長とするパリグループにG20の課題について諮問していた。二人への諮問には驚かされたが、最近の米国での金融規制の繰延、今回の農相会議等を見ていると、同グループが提言で述べていたように、2008-2009年に見られたG20の結束感が消え去り、経済政策の再国家主義化(renationalization仮訳)が始まっていると記した事には十分な理由があるのだと確認させられた。「提言」を読みたい方は、後で下記をクリック!

(→ G20と景気回復、そしてその先…21世紀のグローバル・ガバナンスへの課題

 さて、ここで問題となるのが日本の立場である。食料の安全保障の再構築という課題に直面している我が国にとってサルコジ大統領の主張は渡りに船のはずだが、自民・民主共に英米連合乗りのようである。
 TPP(環太平洋経済連携協定)は、日本農業の大規模経営化と農産物の貿易の自由化を図るものである。途上国からの輸入拡大を進めることは必要だが、日本の食料安全保障を崩壊させてまでして米国等の食糧大国に100%市場を開くことはない。ましてや、大震災の被害の中心となった東日本が農村部を抱えていることを勘案するとTPP加盟は日本の経済復興を妨げるものとなるのは必至である。

 日本代表は、篠原孝副農相が出席する。氏が農林省勤務時代に駐在し欧州農業政策の第一人者になったところがフランスである。篠原氏は自身のブログでTPP加盟に反対する論陣を張っている気骨のある議員である。今回は自身の考えには箝口令が敷かれ、収束の見込みの立たない原発問題に付いて作物の安全性を説明するというむづかしい役回りを果たさなければならない。役目とは言え、どうせやるなら自身の思い通りやらして欲しいものであると思っているのではないだろうか。

森 史朗 2011/06/24 

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2011年5月31日 (火)

震災復興へ共産党が「二重債務(ローン)」解消案…スティグリッツの「良い企業救済」に合致

 共産党の大門参院議員が5月13日の参院予算委員会で提案した、復興のための「二重債務」解消スキームが話題になっている。被災者が復興に取り組む時にいつも足かせとなるのが、「二重ローン」の問題である。住宅ローン、農水産業、商工業者のローン、何れも災害で破壊された家屋、生産設備のローンと再スタートのための投資資金借入の二重の返済に追われることになる。当然資金繰りは厳しく、被災者に二の足を踏ませ、銀行の貸し出し姿勢を慎重なものにさせることになる。結局、資金の回転が弱まり、景気回復の足を引っ張ることになる。これでは、復興、復旧を唱えても、現実には被災地の再建は進まない。せめて被災して実態を失った資産に見合うローンの返済は免除できないだろうか。大門議員は、「マイナスからではなく、せめてゼロからのスタートにしてほしい」という中小業者の声に応えたいと、一例として、下の図のようなスキームを提案した。それによると、「地域経済復興機構(仮称)」を立ち上げ、①借金返済を凍結する、②機構が金融機関から債務を買い取る、③金融機関は債権売却資金で新規融資を行うというのである。被災状況によっては一部債務の減額や返済免除も検討し、債券が軌道に乗れば、債務の返済も可能になると述べた。重要なことは、大門議員が指摘するように、地域金融機関に公的資金を注入するという金融庁の方針だけでは、中小業者は不良債権として処理されて破綻に追い込まれてしまうということである。

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